第22回 投信市場を振り返る―4月―
「インド株投信、堅調−インド通貨ルピー急伸」
(株)QBR 高瀬 浩
4月の月間騰落率ランキングを作成すると、上昇率上位には新興国株投信(エマージング株ファンド)がずらりと並びました。一方、下落率上位は新興企業株などの国内中小型株で運用する投信が占めています。4月も海外株相場が日本株に比べ優位に立つ展開となりました。
新興国株投信の中でも、インド株投信(ファンド)が上位に揃っています。2月末からの急落からいったん持ち直しかけたインド株相場は、4月に入ると急落。インド中央銀行がインフレ圧力を押さえ込むため、市場の意表をつくタイミングで金融引き締め策を発表したからです。
ただその後は急ピッチで回復。インド株式市場を代表する株価指数「SENSEX」は2月の世界連鎖株安前の水準近くまで戻しました。インドを代表するIT大手「インフォシス・テクノロジーズ」が発表した07年3月期の純利益が前年同期比で6割近い増益になるなど主要企業の好決算に加え、インド中央銀行が追加利上げを見送ったことが市場心理を明るくしました。
それに加え、大半のインド株投信は為替ヘッジを行わないため、運用成績はインド通貨ルピーに対する円相場変動の影響を受けます。4月はルピーが急伸し、円は対ルピーで8.5%円安に振れました。グラフは過去10年間のルピー・円相場の動きを示します。ルピー・円相場は1998年後半、実に7年半ぶりの水準まで円安が進んだことがわかります。対ドルでもルピー高が進みました。この数ヵ月は対ドルでのルピー高が鮮明となっています。好調が続くインド経済や、インドの政策金利(翌日物貸出金利のレポ金利:7.75%)との金利格差がルピー高の一因になっているとみられます。
<円の対ルピー相場、過去10年の動き>

インド株投信の1年騰落率には格差も
好調なインド株投信ですが、ランキング表の1年騰落率(比較可能な8本について)をみると、25.9%〜37.8%とファンド間で格差がついています。8本の価格変動リスクにはさほど差がありませんでした。この運用成績の差が一時的なもので終わるかどうか、同じインド株投信でも組み入れ銘柄など運用内容を注視すべき段階に入ってきました。組入銘柄の差異をチェックするには、運用会社がホームページで公開している週次や月次の運用レポートが参考になります。
1年騰落率が37.8%と首位に立ったのは、野村アセットマネジメントの「野村インド株投資」。同社は運用が奏功した理由として、「ディフェンシブ」と「積極」の観点で大きく2回に分け、組入内容を変更したことを挙げています。
『2006年4月の初めに、それまでの株価上昇ピッチが急であったことから、よりディフェンシブ性の高いポートフォリオへのスイッチングを行った。具体的には、バリュエーションが適正水準より大幅に割高となり下落時の流動性リスクがある中型株の多くを売却。また、5月から6月にかけての株価下落を受け、中長期的な経済・株式市場の成長見通しのもと、大型株を中心に株価上昇時に値上がりの期待できる高ベータ株の投資比率を増やすなど積極的なポートフォリオにスイッチングを行った』(野村アセットマネジメント)。
<2007年4月、月間騰落率ランキング、上位20>
★印は主にインド株で運用。
| |
順位 |
ファンド名(一部略称) |
運用会社 (略称) |
騰落率(%) |
リスク度 |
残高 (億円) |
| 1ヵ月 |
1年 |
| |
1 |
日興AM中国A株ファンドU |
日興 |
19.2 |
134.7 |
5 |
485 |
| |
2 |
日興AM中国A株ファンド |
日興 |
19.1 |
134.7 |
5 |
473 |
| ★ |
3 |
CAりそなインドファンド |
CAアセット |
18.0 |
30.9 |
5 |
524 |
| ★ |
4 |
野村インド株投資 |
野村 |
17.9 |
37.8 |
5 |
1,300 |
| ★ |
5 |
HSBCインドオープン |
HSBC |
17.9 |
28.7 |
5 |
1,534 |
| ★ |
6 |
PCAインド・インフラ株式ファンド |
PCA |
17.1 |
− |
5 |
809 |
| ★ |
7 |
三菱UFJ/ドイチェ インド株式ファンド |
三菱UFJ |
17.1 |
31.1 |
5 |
175 |
| ★ |
8 |
ブラックロック・インド株ファンド |
ブラックロック |
17.1 |
31.0 |
5 |
1,255 |
| ★ |
9 |
PCAインド株式オープン |
PCA |
17.0 |
32.8 |
5 |
1,611 |
| ★ |
10 |
ドイチェ・インド株式ファンド |
ドイチェ |
16.8 |
29.9 |
5 |
422 |
| ★ |
11 |
JFインド株アクティブ・オープン |
JPモルガン |
16.2 |
25.9 |
5 |
165 |
| ★ |
12 |
新光ピュア・インド株式ファンド |
新光 |
15.8 |
− |
5 |
886 |
| |
13 |
トルコ投資ファンド |
野村 |
15.7 |
14.0 |
5* |
68 |
| |
14 |
損保ジャパン フォルティス・トルコ株式OP |
損保ジャパン |
15.5 |
− |
5 |
50 |
| ★ |
15 |
新生・UTIインドファンド |
新生 |
15.5 |
− |
5 |
414 |
| |
16 |
ワールド・ゲノムテクノロジーOP Bコース |
野村 |
13.1 |
28.6 |
4 |
118 |
| |
17 |
三井住友・インド・中国株オープン |
三井住友 |
12.6 |
41.7 |
5 |
326 |
| |
18 |
ワールド・ゲノムテクノロジーOP Aコース |
野村 |
11.0 |
18.0 |
4 |
68 |
| |
19 |
三井住友・メインランド・チャイナ・OP |
三井住友 |
11.0 |
77.5 |
5 |
37 |
| |
20 |
住信 エマージング株式オープン |
住信アセット |
10.4 |
− |
4 |
35 |
| 参 考 |
TOPIX |
- |
▲ 0.7 |
▲ 0.9 |
3 |
− |
| 日経平均 |
- |
0.7 |
2.9 |
4 |
− |
<2007年4月、月間騰落率ランキング、下位20>
| 順位 |
ファンド名(一部略称) |
運用会社 (略称) |
騰落率(%) |
リスク度 |
残高 (億円) |
| 1ヵ月 |
1年 |
| 1 |
SBI小型成長株ファンド ジェイクール |
SBIアセット |
▲ 11.0 |
▲ 37.9 |
5 |
190 |
| 2 |
スーパーグロース小型株オープン |
コメルツ |
▲ 10.8 |
▲ 35.7 |
5 |
51 |
| 3 |
小型株ファンド |
安田 |
▲ 10.5 |
▲ 35.2 |
5 |
129 |
| 4 |
エース新小型成長株オープン |
コメルツ |
▲ 9.9 |
▲ 36.9 |
4 |
48 |
| 5 |
日興グローイング・ベンチャーファンド |
日興 |
▲ 8.6 |
▲ 33.8 |
5 |
137 |
| 6 |
エンジェル・ファンド |
ドイチェ |
▲ 8.5 |
▲ 25.4 |
5 |
69 |
| 7 |
JF店頭株オープン’96 |
JPモルガン |
▲ 8.1 |
▲ 30.2 |
5 |
43 |
| 8 |
J-Stockアクティブ・オープン |
大和住銀 |
▲ 7.3 |
▲ 18.7 |
3 |
34 |
| 9 |
ジャスダックオープン |
新光 |
▲ 7.2 |
▲ 34.0 |
5 |
33 |
| 10 |
小型成長株ファンド2006−3(限定追加) |
新光 |
▲ 7.1 |
▲ 28.8 |
4 |
73 |
| 11 |
大和住銀日本小型株ファンド |
大和住銀 |
▲ 6.4 |
▲ 19.5 |
3 |
144 |
| 12 |
店頭株グロース・オープン |
日興 |
▲ 5.5 |
▲ 29.7 |
5 |
65 |
| 13 |
ブラックロック・ジャスダック・オープン |
ブラックロック |
▲ 5.3 |
▲ 14.0 |
4 |
34 |
| 14 |
黒田アクティブジャパン |
ファンドクリエ |
▲ 5.2 |
▲ 26.0 |
3 |
90 |
| 15 |
DKA新興成長株オープン |
第一勧業 |
▲ 5.2 |
▲ 23.9 |
4 |
48 |
| 16 |
古橋オリジナル |
ファンドクリエ |
▲ 5.0 |
− |
2 |
42 |
| 17 |
新光小型株オープン |
新光 |
▲ 4.9 |
▲ 26.1 |
4 |
70 |
| 18 |
グローイング・エンジェル |
ドイチェ |
▲ 4.8 |
▲ 22.9 |
5 |
116 |
| 19 |
SBI中小型割安成長株F ジェイリバイブ |
SBIアセット |
▲ 4.8 |
− |
3 |
37 |
| 20 |
新日鉄グループ株式オープン |
興銀第一ライフ |
▲ 4.7 |
− |
5 |
294 |
経済の過熱からくる利上げ懸念に注意
インドでは物価上昇圧力の高まりから前述の利上げ懸念がくすぶっており、今後も折にふれインド株相場で悪材料視される可能性があります。
インド株投信のリスク度をみると、すべて2番目に大きい水準の「5」となり、TOPIXの「3」に比べ大幅に荒っぽい値動きでした。いったん何かのきっかけで下落しだすと下落幅が膨らむタイプです。4月は急ピッチで回復しましたが、同じハイリスク・ハイリターン型の国内中小型株投信のように下落基調が長期間継続することもあり得る点には注意が必要です。